読了

コロンビア号事項調査報告書についての筆者的考察というところか。内容前半のほとんどが事故そのものに関する解説と事故調査報告書の要約になっていて、で、何が言いたいのんというので焦れてしまったが、要約はほんとに最後の方にまとめてある。まともに報告書なんぞ読めないので、こういう解説があるのはおもしろいね。
最終的には、事故の原因はNASAの組織構造、組織文化にある、という話しに行くのだけど、そこまで原因を追い詰めて報告書が出ているというのは確かにすごいな。官僚体質で情報伝達がうまくいかないとか、「できない」とはいえない文化的背景とか、なんか心当たりのある点がいくつかあって、組織はどこも一緒なんかと。インフラエンジニアとしてみると、本来是正されるべき問題点が、これまで重大な問題にはならなかったから次も大丈夫だろう、という慣れとか惰性とか妥協とかで放置され、結局直接的な事故の原因になってしまったというあたりは身につまされるものがあるなあ。

昭和のロケット屋さん (Talking Loftシリーズ)

昭和のロケット屋さん (Talking Loftシリーズ)

ロケットつながりということでもう一冊。大分前に買ってあったのだけど読んでなかったやつ、上のを読んだのでついでに。
宇宙研で日本のロケット草創期を支えた中核人物によるロケット開発史。やっぱり直接手を出していた人の話はめちゃくちゃおもしろいのね。そんないい加減でいいんかと。糸川先生すげーよ。
あと、対象は何でもよいので、とにかく何かを作る(造る)仕事に携わっている人は一読の価値があるんじゃないかな。「造る人は現場で実際にやってないとだめ」とかすごい説得力。あと、ヘビースモーカーの火薬学の権威の先生のいう「安全の限界」の話なんかは情報セキュリティに関わる人には訴えるエピソードなんじゃないかと思ったり。手順書を作ってその通りにやるように指示しておいても、慣れるに従って、手順書を省いてしまって結局事故の引き金になる、とか、観測機器を制御する計算機の電源コードに足引っかけて抜いてしまって発射打ち上げ中断延期、とか。
あとはですね、カッパロケットの推進薬にクラックが入っていたために起きた爆発事故とか、上の本で指摘されてる原因そのままなんだよね。現場の人は検査でクラックはいっているの気づいていたけど納期優先で上には伝えられていなかったとか。ということで、両方読んでみるとやっぱりリンクする点があったので、このタイミングで二つまとめて読んだのはあたりだったかな。
とにかく、人とかエピソードのおもしろさももちろんなんだけど、こういう失敗事例とかどういう風にやるべきかみたいなあたりが特におもしろい。失敗工学とかに興味がある人にお勧め。
あと、宇宙研の話を知っておくとなおおもしろいので、
はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語 (幻冬舎新書)

はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語 (幻冬舎新書)

あたりもあわせておすすめしておく。


最後に。
上の本、中災防新書(中央労働災害防止協会)というところで出してるんだけど、これ、うちの近所どこにも入ってないんだよね。既刊をみると名前の通り災害防止関連のまた読む人の枠の狭そうな内容でおもしろそうだったりする。システム運用とかに関わる人とかにはよいかもしれん。