読了

追想五断章

追想五断章

米澤さんの本はつい今回は白なのか黒なのかと先入観が働いてしまったりするのだけど、今回のは違った。なんというか、ずいぶんと渋いというか枯れたというか……というのが形容としてどうなんだろうと思うが。敗戦処理の最中右に行こうが左に行こうが結局負けたままで、それでもどうにかしようともがく感じが胃にキリキリくるのですよ。話の仕掛けとしては鮮やかなんだけど、去っていったものとか取り返せなかったものとか、それでいて最後に見えたものとかが後から追いかけてきてキリキリとね。読む前に漫画原作の方を読んでみたのだけど、同じ話といえば同じ話なんだけど構造が違うというか、見えているものは感覚的には一致するけど現物を見ると違っているというか…。どうも映像と音が一瞬一致しなくなるような微妙な違和感なんだけどそれが観ているものを破綻させているわけではないという不思議な感覚。
原作を読んだときもそうだったしこれを読んだときもそうだったけど、こういう感覚…感性は俺にはないな、と思う。そういえば、MLA13に対談が載ってたんだよな。後でもう一度見直そう。個人的にはシステム運用の立場からこういう話題に興味が行ってしまうのだけど、やっぱり思い当たるところがいくつか出てきて考えさせられるよな。なんとなくプログラムのテストとデバッグを思い浮かべてしまうなあ。