読了/OpenFlow本2種
SDN/OpenFlowで進化する仮想ネットワーク入門 (Cloudシリーズ(Next Publishing))
- 作者: 伊勢幸一
- 出版社/メーカー: インプレスR&D
- 発売日: 2013/02/26
- メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
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"OpenFlow本" といいつつ、厳密にはこの本は OpenFlow の話をしている本ではないですね。SDNとネットワーク仮想化…というよりはもう少し広い枠で、データセンタとかキャリアネットワークの技術の変遷・トレンドについての本です。データセンタ事業者とか IaaS サービスプロバイダとか、そういう人たちが作ってきたネットワークって、
- どういう考えでどういう技術を使ってきたのか
- どういう問題があって、今後どういう方向に向かっているのか。
…というような話が網羅的に取り上げられています。ITU-T Y.3011 の話とかから入っているし、データセンタネットワークの技術動向をつかみたい人向けだと思います。
"サーバー担当者が知っておきたい" とか "ネットワーク技術者ではないエンジニアやビジネスマンのために" とか書いてあるんですが、ネットワーク専業やってる人だって、ここまで網羅してこれまでの技術とか今のトレンドとか追いかけられている人、なかなかいないと思いますよ。だって、STP/VLAN/MPLS系技術からSDN/NVO3/L2MP/Ethernet Fabric, ネットワーク仮想化アーキテクチャまで。こんだけフォローするのすごく大変だぜ…。お仕事上、こういう技術変遷のまとめみたいなの作ってみようとしたことがあって、ある程度作ったんだけど、こういうのをまとめるのは本当に大変で。逆に言うと、これ1冊読むとそういった労力がかなり軽減される。少なくとも概要はつかめる。そういう方向で考える分にはいい本だと思います。
欲を言えば。MPLS/VPLS を拾うのであれば、これからの拠点間接続技術って方向で EVPN 関連の話とか欲しかったかな。Point-to-Multipointな/L2の/拠点間接続の話ってNVO3やSPB(SPBMか)とか関連するだろうし。いかに複数の拠点を上手いこと使い回すかとかの話があると嬉しかったかなあ。あと、Y.3011 や SDN の話をするのであれば併せて NFV の話が入ってくると良かったなあ…(執筆時期的に微妙か?)
まあこのへんは個人的な興味の方向性なので…。
- 作者: 石井秀治,大山裕泰,河合栄治
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2013/05/01
- メディア: 大型本
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これもまたちょっと違う方向性の本でなかなか面白かった。"2章: 基本編" は OpenFlow1.0 解説としてはかなり細かく書いてある。英語が苦手で openflow-spec-v1.0.0 読むのがしんどいというおいらのような人には非常にありがたい内容ですね! プロトコル解説としては今のところこの本が多分一番詳細に書いてある。が、マスタリングTCP/IP OpenFlow編 発売が予告された(2013/6月発売予定)ので、もしかしたら内容的にはカチ合うんじゃなかろうかとか邪推。
"3章: 応用編" は Trema C API を使ったコントローラ開発の解説という方向で特徴的。ただ単一L2スイッチの次がすぐ複数スイッチ・経路バランシングみたいな話になっていく + C言語そのものの知識があること前提になっているので、初心者には難しいだろうなあという印象。まあ本そのものが「中級技術者向け」ってなってるしね。ruby-trema である程度触ったことがあって、C APIをやってみたいという人向けにはイイと思う。
で、この本の特徴的なのは "4章: 展開編" かなと。これまでの本は、基本的には hop-by-hop(native) にゼロから OpenFlow Network を作るっていう一番シンプルな環境を前提に話が進む。でもこの本は、既存のIPネットワークとか、それも拠点分散とかまでを考慮した上で、"OpenFlow Island" をどうデプロイしていくか…という話が入ってくるというのが面白い。このへんはやっぱり RISE/JGN-X の人たちが書いてくるだけあるなと。4章は実例ベースにもうちょっと泥臭い話とかが入ってくると個人的には面白かったんだけどなー。(そういう話は出しにくいのかもしれないけど。)
参考