シムシティで考えるITインフラ設計(3)

ITシステム基盤をシムシティ(的)に考えたら見えるもの?

「やりたいこと」

どういうことをやりたいか…どういう会社を作りたいか、どういう街を作りたいか、によって、街とか土地とか建物の「あり方」が決まっていきますよね。

市街/商業/工業地域をどこに置くかのプランニングが甘くて、工業地帯増やしたいんだけど住宅地・商業地はさんで飛び地に置かざるを得なくなったり、発電所増やしたくなったんだけど拡張可能な土地が余ってないからせっかく作った区画を一部削らなくいけなくなったり、山坂ばっかりのところに住宅地作らないといけない羽目に陥って土地をならすのに予想外にお金使わなくいけなくなったり。

まあねえ、「やりたいこと」を明確に決めるって難しいんだけどね。会社作りますとか街つくりますにたいして「どういう会社(業務)であればよいか」「どういう街を目指せばよいか」ってそうすぐはっきり決まるかよ、と。でもそこがないまま走っても仕方がないんだよね。

構造を変化させることの難しさ

たとえ話で考えればもちろん「土地」「建物」…要は不動産の話になっていくので、大きな変化に対して追従させるのが難しいわけです。シムシティだと工業が伸びてるから工業区画増やしたいなあと思っても土地がいっぱいだったり、水利や発電所が足りなくって区画おいてもなかなか伸びてくれなかったりすることがあったりしますね。成長・変化に伴って増やすとか、今の作りが現状に合わなくなってきたから作り替えるとか、現状の問題・あるべき姿の計画、それに併せて何をどのくらいの予算でどう変えていくか…を考えていかなければいけない。発電所を新しくしたいから既存の発電所をいきなりぶっつぶすとかやらないでしょ。新しく別なところに発電所おいてから古い発電所をつぶしたりとか考えるわけじゃない。

情報システムだって同じで、土地 = 計算機で扱える情報量にも上限があるし、計算機自体がデータセンタのラックの中という物理的な区画にあるわけで、計算機リソースの行き着くところはやっぱり不動産になっていったりする。(大手クラウドサービスがデータセンタをガシガシ建てているのはその辺。もう一つの問題は電気代かな。)

まあIT基盤においては、すべてがこのたとえ通りじゃないので、論理的には仮想化技術を使って柔軟さを…みたいな話はある。あるけど、それでもそのための物理リソースをどう作るかって問題からは逃れられないからねえ。すべてに対して柔軟に何かやれるというオールマイティーな解はない。どこがトレードオフになるか、何をとって何を捨てるかを考えないといけない。

というのが「やりたいこと」から決まっていくわけです本来は。本来は。

いやあ、必要な「建物」も見えてないのにとりあえず土地用意して区画切って何か建てられるように準備してよ、みたいな話も実際あるからね…。必要な区画のサイズも、交通量も、特性も、何もわからないけど土地建物を用意しろってねえ。あとでやっぱりもう一個発電所足すわ、みたいな話されて何とかなるかよ、と。(誰に言っているのか?)

都市機能

これはちょっとおまけだけど…。都市を成り立たせている機能と似たような話がITシステムにもあるかな、と。

  • 戸籍
    • ID管理システム(IDM)…LDAPActive Directoryなんかを使ってユーザ管理しているようなところでは、IDMって戸籍っぽいものだと思えば近いんじゃないかな。
    • だとすると、部署の統廃合や名称の変更、あるいは企業合併・買収によるID情報の移行や統合って、そのまま地方自治体の統廃合や合併みたいな感じなんだよね。大変ですよね。
  • セキュリティ
    • 街の中で起きたトラブルを監視するもの、という観点では、警察とか消防とかは IDS/IPS(侵入検知・侵入防止)システムみたいな感じか。あるいは税関とか検問とかはまさにそういう機能だよね。構造物としては堀とか城壁とか。
    • たとえば空港とか、港の近くとか、大きな駅の周辺とか、不特定多数の出入りがあるところが監視ポイントになってくるというのは街もITシステムも同じような考え方だと思えば。あるいは、城と城下町の作りって…という話ちょっと書いたけど、ネットワークセキュリティの考え方ってそういう話になるんだよね。守るべきところは何か、どういうところに、どういうアクセス経路で配置するか、とか。「構造」としてどうやって安全性を保つか。
  • クラウド?
    • こういうたとえ話でクラウドサービスってどう見ればいいんだろうね。工場を持たずに設計とかだけやる会社(ファブレス企業)と製造を中心にやる会社(OEM/ODM企業, 製造のためのリソースを提供するサービス)との関係みたいに考えればいいのかなあ。
    • まあクラウドサービスもいろいろあるからそんな一面的なたとえ話で説明はできないか。
都市構造

これももうちょっと深読みだけど…。

じゃ、会社なり街なりがいっぱいあったとして、それらをつなぐ交通網(ネットワーク)って? という話が出てくる。はい、インターネットの成立ですよね。交通(流通)に使う道具や流れるものの量によって変化・発展していくという意味では結構近いんじゃないかと思うよ。人あるいは馬が主体だった頃、船や車が使われるようになって、飛行機が使われるようになって、…で「何かがどこかに移動する」システムの構造って結構変化してるはず。

あと、都市がすべて1本の道でつながれる(任意の街から任意の街へ直接移動可能な道路を作る)は無理なので、流量とか街や都市や人の配置に応じて集合点ができていくのが普通ですよね。人や建物が集まって、街になって、都市になっていく。宿場町とか、貨物集積所とか、大規模ターミナル駅とか。

……というようなのが、情報システムの世界では何か。まあ前の記事とかでも書いたけど、自分で道路だのなんだの全部整備するのは無理なので、どっか近くの「交通の要所」へ接続していくわけです普通は。はい、これが IX(internet exchange) ですよね。そのへんは インターネットを探して を読むといいと思いますよ。

おわり

こんなところかなあ。こういう話を踏まえた上で ネットワークを考えるときに考えること とかを見てもらうともうちょっと感覚的につかみやすくなったりするかな? インフラ担当なりネットワーク担当なりが、そんなんじゃ設計のしようがねえからこういう話を出せとか文句を言ってくる理由がわかる、もしくは、インフラ/NW担当に対してどういう話を出せばいいのかがわかる……ためのヒントになったりするかな?

あと書くとしたらなんだろ。同じような類推で、可用性(冗長性)とか性能に当たるものとかの例示を考えてみるというのもアリかもしれない。ネットワークについていえば、「専有」「共有」という考え方とかがほかのリソースとはちょっと違うってあたりにも引っ張れるんじゃないだろうか。そこ見るなら、ネットワークエンジニアとしては、自分みたいに「企業情報システムのネットワーク」をフィールドにする人と、「通信事業者のネットワーク」をフィールドとする人との考え方とか違いみたいなところ…とかもあるかもしれないね。

などなど。

最後に。タイトルにつかってみたものの、結局たいしてシムシティの話しなかったなあ……。