読了 / 神は沈黙せず

神は沈黙せず(上) (角川文庫)

神は沈黙せず(上) (角川文庫)

神は沈黙せず(下) (角川文庫)

神は沈黙せず(下) (角川文庫)

今までなんで読んでなかったのかと後悔するような面白さだった。内容のとんでもなさが瀬名秀明 "BRAIN VALLAY" みたいだなーと思ってたら案の定、上巻解説で触れられていたけど、でも "BV" ほど重苦しくなく、上下巻一気に読み。膨大なデータと広範な知識をひっくるめてどう着地するのかと思っていたが、最後のあのアイデアはすごいな。

それにしても、これを読んでて思い出すのが "シムシティ" やってるときの感覚だよね。あのゲームはプレイヤは市長になって街を作っていく…のだけど、きっと誰でも一度は故意に災害を発生させて街を破壊しつくしたりするでしょう。破壊しつくして慌てふためく市民の様子を見ていたり、実時間の何倍もの速さでシミュレートされ復興していく街を見ていたりすると思うわけだ。「ああ、こういうのどっかで見たことなるな、あるいは自分は?」と思うあの感覚。現実世界の街並みを見て「ああ、シムシティっぽい」と思うあのちぐはぐな感覚。あるいは人工生命の研究者クリス・ラングトンのこんなエピソードもそうかもしれない。

「ぼくに人の気配を感じさせたものはゲーム・オヴ・ライフにちがいない、とそのとき実感したんだ。スクリーン上には <生きている> 何かがあった。そしてその瞬間、どういったらいいか、そのときはうまく言葉にまとまらなかったけど、ハードウエアとプロセスの区別がぼくの頭のなかで完全に消えてなくなっていた。ある深いレベルでは、コンピュータのなかで起こることと自分自身の身体というハードウエアのなかで起きることとのあいだに、 じつはそれほどの違いはないんだということを――つまりそれはこのスクリーン上でいま起きているのとじつは同じプロセスなんだということを――まさに実感したわけだ」 --- (M.M.ワールドロップ, 複雑系, p.349)

この本、ある程度の基礎知識があったほうが確実に面白くなるので、上で挙げた複雑系―科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち (新潮文庫)とかの一読をオススメする。あとは非線形科学の話だったら非線形科学 (集英社新書 408G)かなあ。進化論関連の話で思い出したのが竜とわれらの時代 (徳間文庫)か。トンデモ系だとやっぱり瀬名秀明とか、ああ、京極夏彦(京極堂シリーズ)あたりもいいねえ。話の中で出てくる、サールとかホフスタッターの話なんかはとても面白そうなので、おいおいフォローしていこうかな。ホフスタッターはねえ、GEB本とかは途中で止まってるんだよなあ。読もう読もうと思いつつ。このへんの、思考のレベルを変える感覚、一段上(あるいは下)に超越して考える間隔も面白いよね。