読了

虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)

虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)

ということでどちらもNippon2007を契機にして書かれた本だったのですね。正月は暇に明かせてこの辺を読んでました。
「サイエンス・イマジネーション」での、前線の研究者とSF作家のディスカッションというのは面白いねえ。これは生で見てみたかったなあ。各研究者の研究内容と提言に比べて、ディスカッション部分のページが短いような気もするんだけど。自己として譲れないのはどこまでか、とかみんなマッドなことを考えてるんだすばらしい、と。もうちょっと分量増やしてがっちり書いてあってもよかったんじゃないかなーという気がする。
円城塔は "Self-Reference Engine" を買っては見たものの最初の数編で今ひとつついていけず挫折していたのだけど、『「機能する小説」、すなわち「読んでいるうちに計算が実行されるような小説」への強い志向は…』という解説文を読んでようやく腑に落ちたような気がする。あれだ。「ナチュン」におけるデュラム教授のビデオみたいなもんだ。
腑に落ちた気がするといいつつでもこれ、述語論理とかL-Systemとか、まあ俺も適当に書いてみたけど、何らかの類似する数学概念に関する知識がないとニュアンス全然つかめないんじゃないか? と思ったり。そういうのがないままいきなりこれを読んでもふざけてるようにしか見えないような気がする。
作家サイドの小説としては堀晃「笑う闇」が面白かったなあ。この本そのものの内容のピックアップもしていて、ストレートなんだけど、ちゃんともう一歩先に踏み込んでいるというか。あと山田正紀「火星のコッペリア」はなんかもうドキッとさせるよな。恐怖症じみてるとすら思うよ。

「虚構機関」のほうもまた独特なアンソロジーで、編者の言うとおり、SFというのかどうなのか、という話が載っているけど全体通じて面白かったからまあいいよね、と、確かに思うなこれは。こっちで気になったのは平谷美樹「自己相似荘」かなー。最終決着に何かもう一味あってほしかった気もするけど、なかなかいい煙の巻き方だったと。あ、伊藤計劃これで初見だったのだがまた救いがないねえ。既刊気になってきたからそのうち買うかなこれは。あと、田中哲弥「羊山羊」はもうなんつーか超強力。

名前は知っているけどはじめて読んだという作品でも、やっぱりこの人のほかのに手を出すかという気に十分させられるので、この手のアンソロ本は貴重なんだけど、更なる積読を増やすだけのような気もして諸刃の剣なのかもしれん。