MIAUシンポジウム「違法ダウンロード刑事罰化を考える」ログ
はじめに
MIAU : シンポジウム「違法ダウンロード刑事罰化を考える」 のログです。前半、小寺氏の経緯説明の途中からメモを取り始め、とはいえ聴いてる最中に宅配が来たりで一時飛んだりしましたが、ある程度の内容記録できていると思うのであげてみます。例によって、法律用語とか知識が不足しているところは多々あるので、不正確な箇所や発言者の意図をくめていない記述があるかもしれませんがそこは勘弁してください。それは違うよ、というのはコメント等で教えてもらえるとありがたいです。
あと、一部抜けたところについては
の Tweet をもとに再構成しています。
[追記 10/3]
資料追加
- 現代ビジネス×MIAU 違法ダウンロード刑事罰化を考える
- 前半、経緯説明で使用された資料
- 現代ビジネス×MIAUシンポジウム「違法ダウンロード刑事罰化を考える」(2011.10.1)Twitter中継(多元中継ver.) - Togetter
- MIAUシンポジウム「違法ダウンロード刑事罰化を考える」で考える | Film Goes with Net
(以下ログ中、パネリスト氏名については敬称略)
経緯の説明
ダウンロード違法化の動き/DL違法化とはなにか
コンテンツの違法アップロード・ダウンロード
- 違法アップロード
- アップロードは1997年に違法化されている
- 当時は先進的
- 違法ダウンロード
- ダウンロード違法化は去年1月から施行。
- 「情を知って」: 違法アップロードと知っていてダウンロードした場合を違法とする
- 現在までダウンロードによる摘発件数はゼロ。
- 違法化(罰則なし)した時に言われた問題点を
- 改正内容の周知徹底策
- ダウンロード違法化の認知率
- オリコン・アイシェア・レコード協会による調査(2010年)
- 国民の半分弱が未だにダウンロード違法化を知らない
- 適法と違法の判別・識別マーク(Lマーク)
- アンケート: エルマークを知っていますか?
- 知っているし意味も知っている: 5.5%, 見たことはあるが意味はわからない:7.5%, 存在は知っているが実際の運用は見たことがない: 7.0%, まったく見当がつかない: 80.0%
- Lマークはほとんど普及していない
- アンケート: エルマークを知っていますか?
- 違法ダウンロードの刑罰化
- なぜ刑事罰化するか?
- 違法化しただけでは効果がなかった。(最初から違法化の効果はないという指摘はあった)
- アップロードは放置?
- 普通、著作権法の改正は審議会でかけるのだが、らちがあかないので議員立法でやる。行政立法だとパブコメが必要なので。こんな大事なことを議員だけで決めていいのか? 青少年ネット規制法も議員立法でおこなったが、議論もパブコメもなく決めてしまっていいのかは問題視されるべきところだろう。
パネルディスカッション
パネリストから自己紹介とコメント
- 杉本: ニコ動の公式見解としては、刑罰化に関しては一旦支持。立場とか視点を変えて分析している。前提として、ニコ動はストリーミングサービスでダウンロードではないので、直接の因果関係は現状ではない。その上で、ニコ動から解釈すると、海外サイトの関係性において、制度化については賛成できると考えている。
- 杉本: 国内でアップロードされる分についてはアウト。ただし海外へのアップロードについては、国内法では対処できないので、海外動画サイト経由のダウンロードに対して違法コンテンツへのプレッシャーをかけられない。著作権問題については、国内事業者がアンフェアな状況にある。しかたなくユーザに対して違法コンテンツダウンロード規制が必要になるとみている。方向性としては支持しているがツッコミどころは多く慎重に進めるべきだろう。
- 津田: 杉本氏はどちらかというと賛成・権利者に近い立場にある。念のため、シンポジウムにあたっては権利者とか関係各位に声をかけたが断られてしまった。
- 落合: 端的に疑問を感じる。刑事罰を科さなければいけない必要性がいま現在あるのかということ。それをしなければ権利侵害が防止できない、困ったことになる、ということがあるのか。そこまでの切迫性や深刻な状況はないのでは。
- 落合: 刑罰を科すというのは制裁として強烈な手段で、できるだけ避けるべきと言う考え方が刑法の世界では強い。その中で零細な違法行為を処罰することが妥当なのかと言うことに疑問を感じる。また、刑罰を科していくと世の中が暗くなっていくという面もあるので、違法なことをやっていいという訳ではないが刑事罰を科すことが妥当かどうかは十分慎重に考えるべきだろう。
- 白田: 実効性が担保できないのに厳罰を科して、一罰百戒で罰していく。理論的にはみんな犯罪者で、お上の裁量で犯罪者かどうかを決めると言うようなのは危険。法律の方をコントロールすると大したことがなくても罪になっていく。たとえば、温暖化を進める二酸化炭素を排出するのは罪であるとして呼吸罪みたいのを作るとみんな犯罪者。ただより多く二酸化炭素を出すと罰則、みたいにしてしまうとマラソンランナーとか有罪になるが、それを判断するのはどこか?
- 白田: ダウンロード違法化、それ以前に日本の著作権法の罰則が非常に重い。著作権法の研究を始めたときからもうこうなるのが見えていた。違法化も。米国にあるような3倍賠償も法体系の違いがあるが、現実には実現してしまった。刑事罰がついて重い犯罪になるのに現実は変わらない、じゃあ次は、という話になるのが本題。Trusted Device, すべてコントロールして課金していくようなデバイスにしてしまう。プライバシーや人権の問題にきいてくる問題なのでそう易々とは進められないが…。ダウンロードは犯罪、でも守られない、じゃあデバイスでコントロールしよう、となる。そうなると非常によろしくない。そろそろゆでがえる状態から脱することを考える必要があるのではないだろうか。
- 八田: 津田からあったとおり、本来は刑事罰化を推進する立場の人を呼びたかったのだが、断られてしまったので出てきた。これは問題の一部を形成している気がする。ちゃんと説明していない。ルールを決めるのもどこかの役所の限られた審議会・限られたメンバーでいつの間にかレールが引かれている。正当性に疑問があるのではないか。
- 八田: 違法ダウンロード、違法かもしれないがそれが本当に有害なのか、という点について議論がある。経済学などの分野、著作権者の許諾を得ていないダウンロードについては、著作権者に損害をもたらすのではなく、新たな需要をもたらすなどの面でプラスになっているという議論すらある。著作物の流通を阻害する規制は取っ払うべきではというのが優勢になりつつある状況で、規制を加えるのはどうか。
- 八田: 法律としてこれはどうなのか、実効性が本当にあるのか。ダウンロード違法化だけが通ったときにも意味がないと言われていた。それで、「意味がありませんでした、刑事罰化します」と言われても、どんどんエスカレートするだけなのでは。非親告罪化、スリーストライク制など。あと、ビジネスの失敗を一般市民に押しつけているのではないかという気がする。コンテンツ産業の景気が悪くなったのは違法ダウンロードのせいなのだろうか。
討議
- 津田: 結局、2010年1月1日からダウンロード違法化が行われたが、本当に効果があったのか? 今のところ刑罰はついていないので違法ではあるが実際に罰せられることはない。ある意味倫理的な規定になるが、実効性がないので刑事罰をつけて逮捕できるようにしようというのがいま審議されている。認知度が低く、かつ、法律が変わっていくのでどれだけ実効性があったのか? Lマークなどによる違法・合法の認知を進めているとは言われているが、どういった変化があるか?
- 津田: 杉本さんに伺いたい、権利者さんとお話しする機会が多い立場として、どう変わったか実感されている傾向はあるか?
- 杉本: あまり実感はない。プロセスを踏んでも、あまり効き目がない。実効性が伴わないと制度として意味がない。
- 津田: 実感がないから実効性があるものを音楽業界が求めている?
- 津田: ストリーミングやキャッシュは除外する、など、よく知らないユーザが逮捕されることがないような議論が入ったことによって、専門家や利害関係者などで審議した結果がダウンロード違法化(刑罰なし)だった。役所の議論を飛ばして議員が立法することができるところで刑罰をつけましょうというのが。役所に任せていても刑罰をつけられないだろうから、議員側でやりましょうというのが進んでいるが、こういうプロセスについてどう思うか?
- 白田: 議員立法にしても審議会にしても、きちんとしたルーティンに従ってやっている以上、悪いということはない。レコードを売っている人たちが、ありとあらゆる手段で利益を守っていこうとするのも自然なこと。こうした法案が出てくるのも悪くはない。ただ、これがそのまま法律として施行されるのはまずい。法案の作られかたとしてはそういうだろうけれども、いろんな意見を含めて検討を重ねた上で決めていかなければいけない。
- 津田: 法案の中身について、どういった法案になっているのか、条項を見ていきたい。
- 落合: 第1条 目的: 音楽だけを狙い撃ち? 音楽等担っているのでそれだけという訳ではないが、主たる想定としては音楽と言うことになっているようだ。
- 津田: 第2条以降、2項: 「有償著作物等」というものを定めている。売っているものの保護と言うことだと思うが、こうした有償のものを特別扱いするというものは珍しい。
- 白田: お金を取っているかどうかでカテゴライズするのは、他にないのでは。創作活動の保護という趣旨とは違っているのでは。
- 落合: 第3項、音楽等の私的違法ダウンロードの定義規定。
- 津田: 従来の著作権法の改正ではなくて、別立ての法律を作ってという理解で良いのか?
- 落合: 従来の著作権法とは別立ての法律を作って、従来は処罰されていなかったものを処罰しようとしている案になる。
- 津田: 何故こんな煩雑な改正をしようとしたのか?
- 落合: 詳細はわからないが、著作権法は文化庁で制定しているが、そこを議員立法でいじくるのはまずいのではないかという考えがあったのでは。音楽等の私的違法行為というのに着目して、著作権法とは別立てで、オーバーライドしていく。著作権法が一般法、ダウンロードについては特別法みたいな扱いでは。
- 白田: 先例がある。映画館でカメラを使って映画を撮るのを罰する法律。あれが同じ作りで、著作権法はそのままで、問題のある行為を別に取り締まるというもの。著作権法本体をいじるのは大変なので、自分たちの利害に関わるところを別立てで業界が決めていけば良いのでは、という形になったのでは。
- 落合: 自ら違法であるという事実を知りながらダウンロードを行う、ということがどこまで含んでいるか。それによって処罰対象が狭くも広くもなる。一般的な刑法理論では未必の行為というものがあり、確定的でない行為も行為の中に含まれるので、もしかすると「かもしれない」という認識で処罰の対象になることがあり得る。
- 津田: 未必の行為ということでいくと、権利的に全部白ではないだろうからニコ動でもアウトになり得るのか。
- 落合: 録音・録画までしないと違法ではないということになっているので、見ているだけであれば問題はないが、ダウンロードするとなると「違法かもしれない」というのがあれば処罰の対象になるのかもしれない。
- 杉本: 外部ツールを使ってダウンロードするという意志決定をしている場合。
- 津田: 今のところストリーミングは対象外になっているが、音楽業界としてはストリーミングも対象にしていくという要望はある。途中で変わっていけばニコ動ユーザがアウトになる可能性もある。
- 落合: 第3条、努力義務。周知することの努力義務。第4条は罰則、500万円以下、5年以下の懲役、併科もあり得る。これはかなり厳しい。不正アクセス防止法でも1年以下の懲役だったと思う。それを考えれば5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金というのはかなり重い。
- 津田: 厳しすぎるのでは?
- 白田: 著作権法については懲役・罰金というのは上がっている。その中のいくつについては500万・5年というのがあり、そこをそのまま引っ張ってきたのでは。
- 津田: 海外の状況とかどうなのか。日本だけ厳しいのでは、インターネット経由の著作権法違反・海賊版について日本はかなり厳しいと思うが、海外ではどうか。
- 八田: アメリカは違法ダウンロードの刑罰化にはなっている。日本に近いのはイギリスで、違法ではあるが刑罰はない。ドイツやフランスは刑罰化されている。細かいルールを各国の国内でやっていても時間がかかるので、条約化しようという動きがある。ACTAとか。日本とアメリカがACTA調印して後は順次、という動き。
八田氏発言にあったACTAは、本日10月1日に、豪州、カナダ、日本、韓国、モロッコ、ニュージーランド、シンガポール、米国の8カ国が署名しましたよ。→ http://j.mp/p0e41l http://nico.ms/lv65374727 #miaujp
http://twitter.com/#!/hideharus/status/120015548368166912
- 落合: 著作権法の罰則は重くなっているが、それに見合った悪質な行為もある。ただ、違法ダウンロードについて、相当な回数やっている人というのもあり得なくはないが、私的というのがあるように、個人的にダウンロードして使っている。法益侵害性を考えたときに懲役5年に相当する行為が果たしてあるのだろうか、というのは疑問としてはある。やった行為に対して釣り合った法律になっているか。成立するにしても、5年以下の懲役は重すぎるのではないかと感じる。
- 津田: 4条2項
- 落合: 親告罪の規定。告訴がないと処罰できない。これは著作権法とそろえている。
- 津田: 音楽業界自体は非親告罪にしてくれというのはあげているので、将来的に変わってしまう可能性があるかもしれない。
- 落合: 4条3項、現行の著作権法118条に "無名又は変名の著作物に係る権利の保全" というのがある。直ちに権利行使が難しい場合に、発行者が権利行使をすることができる。その考え方を推し進めているのが4条3項の規定だろう。告訴権は被害者(権利者)が持っているが、無名または変名の著作物については発行者も告訴権を持つと言うこと。
- 落合: ざっくり言うと、クリエータと権利を管理する会社がある場合、クリエータが良いと考えても、その権利を使ってビジネスを行っている会社が訴えることができると言うことか。
- 白田: これは刑事罰をやるときに動かしやすくする規定。
- 杉本: 複数権利者がいる場合、権利社内で意見相違が発生した場合はどうなるのか? いまの著作物は複数権利者になるものが多い。
- 落合: 一部が告訴したいと考えた場合に有効な告訴になる。ある物を共有しているときに、その物が壊されたとすると、共有者のうち数名が訴えれば告訴としては有効。一部の権利者の告訴によって有効な告訴になっていくというのが理屈の上での話。
- 杉本: そのほかの権利者が告訴の取り下げを訴えた場合は?
- 落合: 権利者間で話し合いはするべきだろうが、告訴した人が取り下げに同意しない場合は、他の人がその告訴を取り下げられる訳ではないので、告訴としては有効。
- 津田: なぜこんなに複雑なのか。付則2項: 状況を見直して必要な措置を講じる。必要な措置とは改正するかもと言うところも含むのか。
- 落合: 何をするかは文言の中では出てこないが、規定の見直しをするというのは議論のある法律については入れられていることがある。たとえば裁判員法など。何年かたった後に見直すという謙虚なところを入れているのでは。
- 津田: こうした案で議員立法で通すというのが進んでいる。映画盗撮防止法案を通したときのような力業で音楽業界がやろうとしているという構図がある。
- 八田: 「音楽業界が利潤を追求してけしからん」というコメントがあったが、よくわからない法律を作ってお金が回るのであればそれでいいと思う。ただ、これではお金は回らないだろう。音楽業界はどうしたいのだろうか。コピーコントロール導入なども。音楽が新しい規格に乗り換えなかったのは、CDに再販制度があるから。それで墓穴を掘った。1枚3000円のCDをバンバン買ってくれると思っているのなら残念。
- 白田: 明治以降の出版業界の動向を研究しているが、同業者が集まってカルテルを作って利益を担保していくというかたちがある。一定の利潤を保証し続ける、取り次ぎシステム等。第3条はLマーク普及のための協会を作って、有償で音楽配信しているところが一つにまとまって、一つの基準に従って商売していきたいみたいなのがあるように見える。「普及につとめなければいけない」ってあるとどうしたら努めていることになるのか。そこで協会に入って…みたいな流れになる。
- 津田: ビジネスモデルの下手さ、時代に適応できていないというところも。
- 杉本: 実効性を強めるというのは良いけど、ビジネスモデルが抱えている課題に対して問題解決になっているかというと、つながらない可能性があるのでは。違法ダウンロードの影響の定量的分析とか、それが解決されたサイの効果とかも検討されていない。日本の場合、ネットマーケット、UGCみたいなところがはやっているので、コンテンツ拡散や二次創作等を前提したものについてどう展開していくかという課題。制度に頼るのではなくマーケットにアプローチする必要があるだろう。
- 津田: 音楽と動画については刑罰がつくかもしれないという状況。ゲーム業界からはゲームを含めてという話も出ているし、写真や他の業界も。進んでいくと、すべての著作物にいずれ広がっていく。なぜ音楽や映画業界がこれだけ著作権的に優遇されてしまうのか。
- 落合: 優遇するかどうかの前提として、それらの業界は発言力もお金もある。被害者意識も強い。そういう動きになりやすい。
- 白田: 薄いお金が集中して集まる構造になっている。権利を持っている側からすると集中させる権限を守ろうとする。それを仕事にしている専従者が業界内にいる。MIAUには資金がないので対向できない。パワーゲームとして勝てない。
- 津田: 権利を厳しくして、買う人が減って、音楽業界がシュリンクしていくのはそれがビジネスが下手だったねという話でかまわない。MIAUがやっているのは、インターネット全体に関わってしまうから。ニュース記事のブログ転用を印刷してもアウト。最悪つかまる。インターネットを使っていると潜在的に犯罪者になってしまうかもしれない。そうすると法律の方がおかしいのではないか? 落合氏からあったが、そういうのが進むと暗い世の中になってしまうのでは。この流れはこの分野では止まらないのか?
- 白田: 止まらないと思う。一部の著作権の専門家は、ありとあらゆるコピーは無許諾であれば対価を取るべきと考えている。インターネットはコピーで成立している。ありとあらゆることを監視して、課金していくのが究極的な夢。そこに至るまで、違法化、刑事罰化、非親告罪というのを進めている。しかも専従でやっている人たちがいるので、止まらないだろう。
- 白田: 厳しくしていくのが彼らの夢なのだが、皮肉な例として、アメリカで ASCAP というところでラジオに音楽をかけさせないというのをやった。ラジオ局は BMI を作って ASCUP に管理されていない中南米の音楽などをどんどんラジオでかけた。そうすると、ASCAP が扱っていたハイカルチャーの音楽はどんどん廃れて、ラテン音楽とかが広まる土台になった。権利者が権利を強化してしまうと、CGM とか著作権から離れたところが広まる土台になる可能性もある。素人のクォリティだって進んでいる訳で、いっそのこと CGM などを推進するために規制強化してもらってもいいのかもしれない。
- 杉本: ここでボカロ音楽大発展みたいなことも可能性としてあり得るのでは…
- 津田: 審議会参加していて、ひどい場所だとは思った。消費者側の委員が18人いる中ふたりとか。でも、そうは言っても議員立法で強引にオーバーライドしてやってしまうのではなく、専門家や海外の状況など含めて落としどころを探ろうしていて、それなりにユーザ保護規定を盛り込んでいる。議員立法でパブコメもなしに通ってしまうと、慎重な議論やパッチ当てがなく成立してしまうという怖さがある。審議会はひどいところだとは思ったが、議員立法よりはまとも。
- 八田: 規制が厳しくなって実害が出てくるとまた潮目が変わるのではないかという気はしている。
- 白田: 実害、現在でも時々違法アップロードで逮捕されるが、ネットの反応では運が悪いな、とか。たまたま目立つ、運が悪くて検挙されてしまった人を助けようという話は見られない。犯罪者が連帯しろという訳ではないが、労働組合運動が違法だったときには同志の支援があった、そういうのがネットでは見られない。そうすると、事態が悪化していって、最初年1,2人だったのが年10人、年100人となったときに、コンピュータを全部監視するシステムが走り出しているってことがありうる。
- 津田: 違法なのをどう助けるのかというコメントが。
- 白田: ネット民が議員を応援して議員立法を出せばカウンターバランスになる。バランスのとれた人選につなげなければいけない。
- 津田: MIAU何故作ったかというと、インターネットユーザをそういう審議会に入れて欲しいというのがあったから。つくったらまったく呼ばれないけれども。どうすればもっと力をつけることができるか? それでも状況はまともになってきた。
- 落合: 実効性について。親告罪となっているが、告訴できるのかという問題がある。権利者が私的違法ダウンロードをしている人というのが普通はわからない。告訴は氏名不詳でもできるが、犯罪事実を特定しないと告訴は受理されない。私的違法ダウンロードだけを対象にするのであれば告訴できない。なので、アップロード者を告訴、警察がログ等を調査、ダウンロード者が判明、というのがあって初めて告訴になる。違法ダウンロードだけをターゲットにした告訴ができない。元々悪いのはアップローダーなので、元を絶つというのは警察としてはやるだろう。そこは捜査としては変わらない。なおさら、何故こういうのが必要なのか、というところで実効性の問題になるだろう。
- 津田: まず蛇口をひねるというのはその通り。案を話し合っている自民党の部会議事録を見ると、むしろアップロード時点では罪は発生しておらず、ダウンロードして初めて実害が発生しているんだと言うような文章がある。
- 白田: そのためにわざわざ送信可能化権とかつくったのに…
- 津田: 無駄だみたいな発言がある。ダウンローダがいるからアップローダが図に乗るんだみたいな議論もある。
- 落合: 法律とかよくわかってない人たちの発言だろうなと。参考として、刑法でわいせつ物頒布罪というのがある。販売・頒布・犯罪目的所持で処罰される。販売の相手・頒布の相手というのは処罰されない。必要的共犯、対向犯という考え方。相手方も健全な風俗を害しているが刑法上は不処罰とされている。刑事政策的な意味で処罰しない。この場合だって、件の国会議員の論法では権利侵害になり得る。だが刑法、わいせつ物頒布の罪については、販売・頒布者が大きな法益を害しているという考え方をしている。そういう論法をそのまま当てはめろとは言わないが参考にはなるのではないか。
- 津田: その程度の著作権理解で議員立法しようとしていることについては?
- 白田: アップロード・ダウンロードが双方完成しないと法益侵害が起きていないではないかという議論はかなり前からあった。受け手側が家庭内でコピーしているすると不処罰になるが、全体として不正ダウンロードはおきているので、どこかでやらなければいけないというのがあって、わざわざ送信可能化権っていうのを作ったのに。そこを意味がないみたいなことをされると何だったのだろうかと。
- 津田: なぜ日本の著作権はこれほど厳しいのか?
- 白田: 「なぜ日本の著作権はこんなに厳しいのか」これが一般に認知されるようになると状況は変わると思う。だれが著作権をコントロールしているかというのを、同じ人がずっと委員長などをやっているというのを公開の資料から淡々と調べた。このプロセスを変えないと。構造的問題。薄い負担が特定の人に集中して強い権利が生まれているというのを変えなければいけない。
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- 津田: その構造に対して一石を投じようというのがあって活動している。が、MIAUに求められているのはどういうことだろうか?
- 八田: MIAUいなくていいのでは。我々は有害なのではないか、というのが半分冗談、半分本気である。回復不能なところまでいってしまえば。そもそもこんなことやっていてる余裕あるのだろうかこの国は、と思う。法律厳しくしてクリエータにお金が行くのであればかまわないのだけど、そうはならないだろう。
- 白田: MIAU作るときにこんな類似団体がどんどん出てきた方がいいと言った。反対意見があるんだったら団体どんどん作ればいい。MIAUががんばっているから良いのではないか、みたいな空気になるならなくなってもいいのでは。エジプトとかリビアみたいな誰が見てもまずいみたいな状況にならないと動かないのであればいくところまでいってしまえばいい。薄く削られていっても気づかなくて、権利者のパワーと台頭な団体ができるまでは 4〜5人、人死にが出るといった状況にならないと変わらないのでは。
- 白田: どうして我々はこんなに連帯できないのか
- 津田: ドワンゴで1年以上番組を持っていて、見てくれる人が増えているというのは大きい。認知度も上がってきたし、会員も徐々に増えている。以前のまったく連帯できない状況というのよりはちょっとずつは。
- 白田: MIAU面倒くさいことが増えてネットでたたかれてメリットがない…
質疑応答
- Q: 刑罰化、現状でも違法化している。であれば民事でも訴えてしまえばいいのではないかと思うがそれをやらないのは何故か?
- 落合: よくわからないが、実効性が乏しいと思う。お金を払ってください、というときに、相手が法人とかお金を取れるところであればメリットがあるが、普通は個人がやっている。それほどお金が取れると思えない。請求しても任意で払ってもらえるかというと難しいし、訴訟にはお金がかかるので、やるメリットは見いだしにくい。推測だが、現状だと違法アップロードしている人に対して民事・刑事で制裁が加えられることで目的を達成していると考えて、さらに違法ダウンロードしている人まで請求するところまで入っていないのではないだろうか。
- 津田: 審議会で質問している。実効性の問題から難しいが、やらないとは言えない、という玉虫色の回答だった。コスト割れするのは彼らはわかっているが、やらないというと違法化の意味がないのでやらないとは言えないというやりとりがあった。
- コメント: エアチェックが復権するのでは。アナログ方式のチェックが復権するだろうと。権利者はクォリティにこだわるが、消費者はあまりクォリティにこだわらない人もいる。そこは対抗策の一つなのではないかと思った
- Q: ダウンロードの方法を公開している雑誌とかが規制されて表現の自由が規制されるという危険性は?
- 津田: ダウンロード違法化でよく、"ぶっこ抜き" 特集雑誌など、違法ダウンロードを助長するような雑誌などを規制できないかというのは業界は言っている。法律論的には難しい。
- 落合: 刑事罰化されたとすると、そうしたことを教えている・本を売っているというのは幇助犯として刑事責任を問われる可能性が出てくる。刑事罰として正犯があれば幇助犯として立件されるというのが可能性としてあり得る。
- 津田: いままでそういったメディアへの規制ができなかったが、刑事罰化によって規制する可能性があり得る。
- 落合: 言っていないとしても立法する側は視野には入っているだろう。
- 津田: 表現の自由との関連は?
- 落合: 人の行動の自由を制約するものが増えていくのが増えていくというのはいかがなものか、処罰の範囲が拡大していく危険性はある。
- 津田: 著作権と憲法とからめてどうか
- 白田: 従来の著作権のメインストリームは著作権法と言論表現の自由がバッティングするというのがあり得ないというところ。ただ、著作権は言論表現とバッティングする可能性はあると思う。日本ではほとんどやっていないが。日本でも言論表現の自由と著作権法のバッティングについて検討する段階に入ってきている。
- 作者: 大日方信春
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- Q. アーティスト自身がこの問題を知っているのか? イギリスではアーティストが権利問題を扱う団体がある。国内議論で、アーティスト自身が登壇・議論の場へ登場して発言したことがあるのか、MIAUとしてそういうアーティストへのアピールみたいなのはしないのか?
- 津田: ありました。JASRAC独占が2000年くらいまで続いていたので、アーティストからの活動が起こってJASRAC独占が崩れたとか。アーティスト自身が権利を考えようというのが2000年くらいに盛り上がってその後解散した。レコード輸入権などがあってまたあったが法律が変わってしぼんだ。アーティストも事務所からサラリーをもらっているのが多く、業界として一体にならざるを得ないというのがあって、アーティストの横連帯が生まれにくかった。ただ、ソーシャルストリームなどが広まるにつれてまた変わってきているが、それはアーティスト自身の動きがあったから。ニコ中のアーティストを巻き込んだ新しい活動とか、アーティストからの声が上がっていくとまた変わっていくのでは。
- 八田: アーティストは基本的に商売好きじゃないのではないかと。
- 白田: いまおきている違法化、刑事罰化、非親告罪化、このプロセスの中で意識せずにすり込まれているのは、他人の著作物を使うのは悪であるということが、所与の前提になっている。そこをまず変えていかないと。アーティストが最も望ましい状況を公の場で言える状態にならない。茹で蛙といったのは、そこをこえていかないとどんどん何も言えなくなってしまうから。
- 津田: 審議会出ている人たちと飲みに行っていったりすると、音楽ってコピーして広まったよね、なんて言ったりする。でも、ちょっとくらいコピーしたって、宣伝になることだってあるのでは、なんて公式に発言するとめちゃくちゃ怒られる。
- 白田: 公式の場で言いにくいだけじゃなくて、ネットの側でもたたく。みんなが、構造として作られているのかもしれないけど、どんどん厳しくしてちょっとでも踏み外すとたたいてしまって、どんどん息苦しい方向にサイクルが流れているというのがある。アーティストが、本当はこうしたいんだっていうのがあっても、著作権法でだめだとか言われるともう声が上げられなくなってしまう。なので、共同声明とかステートメントというかたちであげないと、個人では怖くて出せない。本当は作っている側が声を上げるのが一番パワーがあるが、専門家ですらよくわからないと言ってしまうくらい複雑化しているものを、アーティストがそれを気にして活動するのはほとんど不可能で、アナウンス効果で刑事罰がついた、ダメだと言われると動けないだろう。
- 津田: これも一種の、特定業界を利益・権益を守るためのポリシーロンダリングだろう。
- 白田: そういう正義はあまり根拠がないのだというのを言っているが、説明困難。
まとめ
- 津田: ではどうしたら良いのか。まだ確定した訳ではないし、自民党案として出して民主党がペンディングさせるという可能性もあって不透明な状況なので、ユーザ側がどうとらえていけばいいのか。まとめを。
- 杉本: 流れそのものはできてはいるが、みんなで理解していく必要がある。まずはネットのユーザがちゃんと把握することがとても重要。MIAUどうするかという話はあったが、後付けでも理解するための場が必要。当事者を巻き込んだ上でみんなで考える場所をちゃんと作る必要がある。それはすぐに変わる訳ではないが、続けていくことで力をつける。1年間「ネットの羅針盤」をやったことでMIAUの活動を知ったりしたことがあるだろうし、まだ知られていないと思うので、まずは広げていくのに意義があるだろう。それがネット全体の意志として、世の中の動きを変えていく方向につながるのでは。
- 落合: インターネットユーザに対する萎縮的な効果は重大だろう。刑事罰まで科されるとなると、常にびくびくしながら使わなければいけなくなる。何か違法ダウンロードしてしまったのでは、という負い目をおいながら暮らすことになって、萎縮的効果がおきるだろう。そうまでして罰を科さなければいけないのだろうか、というのを考えなければいけないだろう。MIAUに望みたいのは、そういったユーザの声は表に出にくいので、そこをうまく出していって、本当にこれでいいのかというのを言っていくという機能を果たして欲しい。
- 白田: わかりやすい正義を掲げて声が大きな人に関して、ネットの中ではシニカルだよね。それをネットの外でも言って欲しい。わかりやすい正義に押しつぶされている気配がここのところしている。それに対して、ソースを確認したり検証したりする能力はネットにいる人は持っている。それが表、公式の場に出てこない。出して欲しい。
- 八田: 海外の団体とつきあいが割とあるのだけど、アメリカとかだと自分の住んでいるところの議員に手紙を送ったりする。日本だとそういうアプローチの文化があまりない。日本は政治、社会のルールを決めることが自分から遠いものだと思っているところがある。もうこの国のありようとか政治の有り様を変えなければどうにもならない。それはMIAUだけでは無理なので、自分たちの生きる社会のルールを誰がどのように決めるべきなのかというのを、考えて欲しい。
- 八田: 学者としては、著作権法はちょっともうダメなんじゃないか、パッチワークがひどすぎるだろうと。学者は科研費でお金をもらっている。アーティストもそんな感じで、お金をどこかに集めて、ドラスティックにシステムを変えてしまった方がいいのではないかとかそういったことを考えたりしている。今年は是非日本で海賊党を。そろそろ政治というものをちゃんと考えなければいけないなと言うのが個人的に思うところ。
- 津田: 今週、音楽業界の偉い人と雑談をしていて、潮目が変わってきた、意識が変わってきたなと思う話があった。法律ができるまえに騒ぐのが大事なので、こうして議論の場をまた作っていきたい。